多くの選管が投票所での新型インフルエンザ対策に気を配るほか、市長選、市議補選などとの「ダブル選」「トリプル選」となり、混乱防止に腐心する選管も。政権の行方をかけた投開票日まであと1日――。
◆インフル対策
都道府県の中で新型インフルエンザが最も流行している沖縄県。那覇市では52か所の投票所で入場時に手の消毒を呼びかけるほか、職員が随時スプレー式消毒液で記載台を消毒する。
ただし、投票所に詰める職員は基本的にマスクはしない。選管の担当者は「必要以上の対策が有権者の不安をあおってしまい、投票所への足が遠のくようでは困る。職員にはうがいや手洗いを徹底させたい」。体育館での開票作業は約700人で行うが、ここでもマスク着用は検討していない。
東京都調布市でも、市内36か所の投票所にスプレー式消毒液を用意する。市が確保しているのは約400本。使用した分は選挙後に補充する予定だが、市選管は「9月から学校が始まると、感染拡大の可能性が高まり、メーカー在庫がなくならないか心配」と話す。
東京都荒川区では、32か所の投票所の入り口にマスクを置き、自由に取れるようにするという。
◆ダブル・トリプル選
横浜市は中田宏・前市長の辞職を受け、市長選とのダブル選となる。さらに栄、青葉両区では市議補選も重なり、両区の投票所計70か所では衆院選の小選挙区と比例、最高裁判所裁判官の国民審査に加え、市長選、市議補選と計五つの投票箱が並ぶことになる。
7月21日の解散直後は市職員6500人で開票作業にあたる予定だったが、その後、市長選などの実施が決まったため、開票にあたる人員も市職員1000人と市民ボランティアや人材派遣会社の1100人を補充した。
中田前市長は辞任する際、「同日選により約10億円のコスト削減になる」と強調したが、担当者は「計算上はそうだが、現場は準備が大変」と悲鳴を上げる。投票用紙も5色に分け、投票箱や案内板にも用紙と同じ色を使って、交付ミスや投票ミスを防ぐという。
4年前の前回と同様に、県知事選とのダブル選となった茨城県。県選管は「人件費や投開票所の設営費などが節約できる」と歓迎し、約7億円の経費削減を見込む。県議補選も行われる那珂市選管では、投票用紙が5種類になるが、投票所のスペースの関係で投票箱は四つしか置けないため、比例選と国民審査は同じ箱に投票してもらう予定。「混乱を招かないよう細心の注意を払いたい」としている。
群馬県高崎市の産婦人科病院「佐藤病院」で、リラックスしてお産を迎えるための呼吸法教室が行われていた。参加者は約30人。顔を覆い尽くすほど大きなマスクを全員がかけている。
先月22日から、面会、付き添いを制限し、患者にもマスク着用をお願いするなどしている同病院は、年間1800件前後の分娩を扱う。佐藤仁院長(72)は「万が一、院内感染でお産の場が減ってしまったら大変」と、新型インフルエンザ対策に力を入れる理由を話す。
教室に参加していた妊娠9か月の綿貫好美さん(39)は、「小さな子どもがふたりいるので本当に怖い」。妊婦だけでなく、乳幼児も重症化の危険があるといわれるだけに、不安は大きい。
大阪府松原市の「星の光幼稚園」では、登園した園児が必ず通るげた箱付近にサーモグラフィーを設置。子どもが園内に入る前に熱がないかをチェックする。東京・港区の「コンビプラザ品川保育園」では、これまでも登園前の検温を指導してきたが、先月27日からは職員による登園時の検温も徹底している。
同様に重症化の恐れが指摘されているのが慢性腎不全や呼吸器疾患などの持病がある人だ。大勢の患者が一緒に人工透析を受ける「飯田橋鈴木内科」(東京・新宿区)では、ベッドの間隔を広げ、透析患者と他の外来患者の接触を防ぐための動線も用意。「練馬桜台クリニック」(東京・練馬区)では個室の透析室を設けた。